2026年9月、福岡大学の講義「流通システム論」に、福岡販売士協会の大学連携講座としてゲスト講師で登壇しました。テーマは「小売の学びで”見える世界”が変わる」。70分の講義で大学生に伝えたのは、資格の説明よりも先に「いつもの買い物の見え方が変わる」体験でした。
このコラムでは、講義で取り上げた話題が、販売士の学習のどこにつながっているのかを整理します。これから販売士を学ぶ方は、「試験のための知識」がそのまま「お店を見る目」になることを感じていただけるはずです。
講義当日の様子や学生アンケートの結果は、運営者の中小企業診断士サイトで紹介しています。
講義の話題と、販売士で学ぶ単元
講義で大学生に投げかけた「なぜ?」は、どれも販売士3級・2級の学習内容につながっています。
| 講義で取り上げた話題 | 販売士で学ぶこと |
|---|---|
| レジの「ピッ」の向こう側で何が起きているか | POSシステムのしくみ、売れ筋・死に筋の把握(マーチャンダイジング) |
| 卵が赤字ぎりぎりの値段で売られている理由 | 目玉商品の値入率、マージンミックス(マーチャンダイジング) |
| 100円ショップはなぜもうかるのか | 均一価格店の仕入れと利益の考え方(小売業の類型) |
| 新商品をどこに置き、どう伝えるか | 関連陳列、POPなどの店内表示、VMD(ストアオペレーション/マーチャンダイジング) |
| 誰に向けて売るのかを決める | STP分析などのマーケティングの基本(マーケティング) |
レジの「ピッ」は、お店の頭脳につながっている
バーコードを読み取る「ピッ」という音。お客さまにとっては会計の合図ですが、お店にとっては「いつ、何が、いくつ売れたか」というデータが記録される瞬間です。
このデータが集まると、よく売れる商品(売れ筋)とあまり売れない商品(死に筋)がはっきりします。売れ筋は切らさないように発注を増やし、死に筋は売場から外して別の商品に入れ替える。販売士で学ぶPOSシステムは、レジの機械の話ではなく、品ぞろえを決めるための仕組みの話なのです。
卵が安いのは、お店が損をしているから?
チラシで卵が驚くほど安く出ていることがあります。1つの商品だけを見れば、ほとんど利益が出ていないかもしれません。それでも安く売るのは、卵を目当てに来たお客さまが、ほかの商品も一緒に買ってくれるからです。
販売士では、このように集客のために値入れ(利益の上乗せ)を低くした「目玉商品」と、利益の高い商品を組み合わせて店全体で利益を確保する「マージンミックス」を学びます。計算問題として出題されることも多い単元ですが、考え方さえつかめば、チラシの見え方が変わります。
100円ショップは「全部100円」だからもうかる
100円ショップの中には、仕入れ値が100円に近い商品もあれば、もっと安く仕入れられる商品もあります。1つひとつの利益はばらばらでも、店全体で利益が出るように品ぞろえを組み立てているのがポイントです。
さらに「全部同じ値段」だからこそ、値札を付ける手間が減り、お客さまは気軽に「ついで買い」をしてくれます。販売士3級の「均一価格店」の単元は、こうした仕組みを業態の特徴として整理したものです。
新しいドリンクを、どう売る?
講義では、新作のエナジードリンクをどう売るかを、隣の人と3分間で考えてもらいました。「誰に売るか」「どの棚に置くか」「POPに何と書くか」「一緒に何を並べるか」。学生から出てきたアイデアは、そのまま販売士の学習内容です。
- 誰に売るかを決める → マーケティングのSTP分析
- 一緒に何を並べるか → 関連陳列
- POPに何と書くか → 店内表示物の役割(表示には法律上のルールもあります)
- 売場全体でどう見せるか → VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)
知識がなくても、アイデアは出せます。でも、知識があると「なぜその売り方がよいのか」を説明できるようになります。この差が、現場で提案が通るかどうかを分けます。
3級は「売場を見る目」、2級は「店と数字を見る目」
講義では、級の違いを難しさではなく「視点の高さ」の違いとして伝えました。3級は売場と商品を見る目、2級は店全体と数字を見る目です。どちらも、いつもの買い物やアルバイト先の売場が「教材」になります。
「資格を取ったけれど、使い道がよくわからない」という声を聞くことがあります。でも、販売士の知識は、棚の前に立ったときに「なぜこう並んでいるのか」がわかるところから活きてきます。まずは身近なお店で、学んだことを1つ探してみてください。
これから販売士を学ぶ方へ
講義の最後に伝えたのは、「アルバイトや買い物でばらばらに経験してきたことが、学ぶことで1本の線につながる」ということでした。販売士は、その線を引くための地図のような資格です。
受ける級を決めるところから始めたい方は、次のページをご覧ください。
トップページの「今日の1問」でも、毎日1問ずつ3級の問題に挑戦できます。
執筆:毛利裕之(1級販売士・日本販売士協会 登録講師/中小企業診断士)

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