1. 理論の要約:在庫管理の基本原則と2大発注方式の仕組み
在庫管理が目指す「品切れ防止」と「過剰在庫防止」
リテールマーケティング(販売士)検定のマーチャンダイジング分野において、在庫管理(受発注管理)は毎年のように出題される最重要テーマです。
店舗が在庫を持つ理由は、お客様が買いに来た時にすぐ商品を提供できるようにするためですが、在庫を持ちすぎると資金が固定化し、売れ残りの値引きや廃棄損が発生します。
- 品切れ(欠品) ➡️ 売上の機会損失、顧客の信頼失墜
- 過剰在庫 ➡️ 保管費用の増大、商品の劣化・陳腐化、資金繰りの悪化
この2つのリスクを同時に防ぎ、常に「適切な量の商品を、適切なタイミングで仕入れる」ために考案されたのが、「定量発注方式(発注点方式)」と「定期発注方式」という2つの発注方式です。
定量発注方式(発注点方式)の基本と計算式
定量発注方式とは、「在庫があらかじめ決めておいた一定の数量(発注点)まで減った時に、毎回決まった一定量(発注量)を注文する方式」です。
- 発注する「量」:常に一定(固定)
- 発注する「時期」:売れ行きによってバラバラ(不定期)
本試験で確実に得点しなければならないのが、以下の「発注点」を求める公式です。
- 発注点の算出公式:発注点 =(1日あたりの平均需要量 × 調達リードタイム)+ 安全在庫
「調達リードタイム」とは、商品を発注してから実際に店に届いて棚に並ぶまでの日数です。「安全在庫」とは、急に売れ行きが伸びたり、配送が少し遅れたりしても品切れを起こさないための「予備クッション」です。
定期発注方式の基本と計算式
定期発注方式とは、「毎週月曜日、あるいは毎月10日と25日といったように、決まった一定の周期(発注間隔)ごとに、その都度必要な数量を計算して注文する方式」です。
- 発注する「時期」:常に一定(定期的)
- 発注する「量」:その時の需要予測や在庫状況に応じて毎回変わる(変動)
- 発注量の算出公式:発注量 =(発注間隔 + 調達リードタイム)× 1日あたりの予想需要量 + 安全在庫 − 現在の在庫量 − 発注残
※「発注残」とは、すでに注文済みで、まだ店に届いていない入荷待ちの数量です。
2大発注方式の比較まとめ
試験問題で最も狙われやすい両者の特徴の違いを整理します。
定量発注方式
特徴:在庫が基準(発注点)を下回ったら決まった数を頼むだけなので、運用がシンプル。
デメリット:需要の急激な変化や季節変動に対応しにくい。
主な対象:単価が安く、年間を通じて売れ行きが安定している定番商品(B〜Cランク商品)。
定期発注方式
特徴:毎回売れ行きを予測して発注数を決めるため、無駄な在庫を極限まで減らせる。
デメリット:毎回緻密な計算と在庫の確認が必要で、手間とコストがかかる。
主な対象:単価が高い商品、売上の大部分を占める主力商品、季節商品やトレンド品(Aランク商品)。
2. 現場イメージと具体例:試験理論が実際の店舗でどう動いているか
ABC分析と発注方式の組み合わせ
テキストで学ぶ「ABC分析(重点分析)」は、現場ではまさにこの発注方式の使い分けに直結しています。
- 売上の7〜8割を稼ぐ「Aランク商品」スーパーの牛乳・食パン、ドラッグストアの目玉ティッシュなど。➡️ 定期発注方式を採用。毎日〜毎週決まった曜日に天候や特売計画を見ながら、「今週は何ケース売れるか」を精密に予測して発注します。
- 売上の1〜2割を占める「Bランク商品」定番の調味料や洗剤など。➡️ 定量発注方式を採用。POSレジのデータと連動させ、「棚の在庫が3個になったら自動で1ケース(12個)発注される」仕組みにして手間を省きます。
- たまにしか売れない「Cランク商品」高級調味料、特殊な文房具など。➡️ 「2ビン法(ダブルビン方式)」などの簡易定量発注を採用。商品を2つの箱(ビン)に分けて置いておき、「1箱目が空になったら2箱目を開封し、そのタイミングで1箱分を発注する」という物理的な仕組みで管理します。
よくある現場の失敗例:なぜ「勘」で頼むと店が荒れるのか
店舗の現場でよくある失敗が、ルールを決めずにスタッフの「勘」で発注してしまうケースです。
- 失敗のパターン:週末に売れる人気のお菓子を、「なんとなく減ってきたから」と木曜日に適当に発注したところ、金曜日に納品が間に合わず土曜日の午後に棚が空っぽになり、買いに来たお客様を逃してしまう(リードタイムの計算不足)。逆に、月曜日に「欠品が怖いから」と大量に注文しすぎてバックヤードに入り切らず、商品が山積みになって賞味期限が切れてしまう(安全在庫の過剰)。
試験で問われる数式は、こうした現場の「品切れ」と「余剰在庫」を防ぐための安全装置そのものなのです。
3. 試験対策・得点力アップの急所:頻出ひっかけパターンと計算のコツ
ひっかけパターン1:「定期」と「定量」の入れ替え問題
正誤問題(〇×問題)で一番多い出題パターンです。
- × 誤文の例:「定量発注方式は、あらかじめ定められた期日ごとに、その都度需要を予測して発注量を決定する方式である。」➡️ 解説:期日ごとに需要を予測して発注量を決めるのは「定期発注方式」です。言葉の定義が逆になっています。
- 見極めルール:
- 「発注点」「一定量」「簡易」「Cランク」という言葉が来たら ➡️ 定量発注
- 「発注間隔」「需要予測」「高単価」「Aランク」という言葉が来たら ➡️ 定期発注
ひっかけパターン2:発注点の計算問題
「日平均需要量 = 10個、調達リードタイム = 3日、安全在庫 = 5個」の場合の発注点は?
- 計算手順:
- リードタイム中に売れる数を計算:10個 × 3日 = 30個
- 安全在庫を足す:30個 + 5個 = 35個
- 得点のコツ:「店に届くまでに売れてしまう数(30個)に、念のための予備(5個)を足しておく。だから店頭の在庫が35個になった瞬間に発注ボタンを押せば、在庫が5個まで減ったちょうどその日に次の商品が届く」という時間と在庫の流れを頭の中に描けると、計算ミスは絶対に起きません。
ひっかけパターン3:定期発注の計算での「期間の足し算」
定期発注の計算問題では、掛ける日数に注意してください。
- 注意点:「発注間隔(例:7日)」と「調達リードタイム(例:2日)」の合計(7日+2日=9日分)を予想需要量に掛けなければなりません。「今頼んだものが届き、さらに次の発注分が届くまで」の期間全体を支える必要があるからです。
4. まとめ:公式の丸暗記を脱して「現場感覚」で合格を掴もう
リテールマーケティング検定のマーチャンダイジング計算問題は、文字の公式だけを暗記しようとすると難しく感じてしまいます。
しかし、「お店の棚から商品が減っていき、発注してトラックで運ばれてくる」という売場のリアルな情景と結びつけて理解すれば、公式は当たり前の常識として頭に定着します。
- 定量発注は「減ったら決まった数を頼む」定番の省力化
- 定期発注は「決まった曜日にじっくり考えて頼む」主力商品の精密管理
この2大発注方式の考え方をしっかり整理して、本試験での確実な得点源にしていきましょう。
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